中学校の恩師が
教師を目指すきっかけに
学生が運営する個別指導塾「ガクセイ塾」。宮崎大学教育学部3年の納富崇さんが立ち上げた完全オンラインの塾です。福岡県出身の納富さんは、小さい頃は内向的な性格でしたが、中学でバレーボール部に入部し、顧問の教師に出会って一変。「先生の存在がすごすぎて。憧れでしかなかったです。この時に自分も教師になろうと決意しました」。限界まで体を追い込む厳しい練習を経験し、自分に自信がついたと言います。バレーの強豪校に進学してキャプテンも務め、気づけば何事にも積極的に取り組むようになっていたそう。大学進学について熱心に調べてくれた担任や、浪人中に出会った予備校講師のアドバイスもあり、数学の教師を目指して宮崎大学に進みました。
笑顔の絶えない納富さん。動画編集やプログラミングも独学で身につけ、ガクセイ塾のシステムを作り上げた
経済格差による
学力格差をなくしたい
納富さんは、宮大に入学後すぐに個別指導塾で講師のアルバイトを始めます。転機となったのは、受け持っていた生徒がふと漏らした、「塾の授業料が高くて親に気を遣ってしまう」という言葉。「経済的な理由で塾に通うことを諦めている子どもたちもいるはず。彼らのために何かできないか」と考えるようになりました。一般的な個別指導塾よりも低価格で、かつ指導の質は落とさないようにするにはどうすればいいか…。納富さんが出した答えは、「完全オンラインの塾をつくる」というものでした。オンラインであれば、場所代がかからずスタッフも少人数ですむため、授業料が抑えられます。昨年4月にクラウドファンディングで資金を募ると、1カ月で104人から合わせて53万円余りの支援がありました。「お金も必要でしたが、学生が運営する塾ということを知って欲しかったので、反響があってうれしかったです」。
ガクセイ塾を支える学生メンバー。コロナ禍で自身も苦しい中、一人一人が自分にできることに全力で取り組んでいる
「あの塾に通いたい」
そう思わせる塾を目指して
昨年5月に開業したガクセイ塾には、現在、中学生5人が在籍し、宮大の学生などが講師を務めています。Zoomでの個別指導だけでなく、24時間質問OK、学習に役立つ動画コンテンツなどさまざまなサポートを展開。納富さんは、生徒と毎日LINEでやり取りをして、学習意欲を上げるアドバイスをしています。保護者からは、「通わなくていいので、行き帰りの心配をしなくてすむ」「勉強をする習慣がついた」と好評だそうです。2月末には、高校入試対策のオンライン模試を無料で実施。さらに、勉強の進捗状況を可視化できる学習管理システムや子どもたちの居場所づくりのためのバーチャルオフィスの開設など、次々とアイデアを実現させていく予定です。「大学卒業後は、福岡の大学院への進学を目指しているので、ガクセイ塾を残すための準備もしています。残り1年、宮崎の子どもたちのために、いろんなことにチャレンジして全力で走り切りたいです」と力強く話してくれました。
ガクセイ塾は、宮崎市子どもの貧困対策活動支援事業の助成を受け、昨年「オンライン学習体験プログラム」を実施。子どもたちにPCやタブレットの基本的なスキルを教えた
■ガクセイ塾
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